曲目について

川口 優和

今回の演奏旅行の曲目は、第1部前半にマンドリンオリジナル曲3曲、後半は邦人作品6曲、そして第2部はクラシック小品4曲とギリシャ・イタリア歌曲各4曲、それにアンコール曲を用意して参りました。
1部前半については、アテネ・ローマ共に「交響的前奏曲」と「ギリシャ風テーマによる狂詩曲」を演奏しました。「交響的前奏曲」を取り上げたのは、今年作曲者ボッタキァーリ生誕120年に当たるのと、この曲については'79年イタリアにおけるコンコルソで課題曲、スカルラッティのソナタと共に演奏した想い出の曲であり、当時出演したメンバーが今回の演奏旅行に参加している事も考え合わせた為でもあります。作曲者U. ボッタキァーリ(1879〜1944)、マチェラータのカステルライモンド生まれのイタリアの作曲家で、ペザロの音楽学校でマスカーニの和声とフーガを学ぶ。作品にはジェノヴァ市に捧げた4楽章のシンフォニー、オペラ「影」他がある。「ギリシャ風テーマによる狂詩曲」ニコロ・ラウダス(1879〜1944)、マンドリナータ アテネーゼの主催、指揮者であり古代ギリシャ最大の文学ホメロスの叙事詩「イーリアス」に出てくるトロイヤの王后をテーマに作曲された「エーカーブの嘆き」や「第1ギリシャ狂詩曲」「クレタ舞曲」他があるが、今回は「セレナーデ」「第2ギリシャ狂詩曲」である本曲を演奏する事としました。なお、ローマではR. クレパルディ「夜想的間奏曲」を「セレナータ」の替りとして演奏しました。
1部後半は恩師である菅原明朗(1897〜1988)作曲「フォーレの名による小ロンド」、FAUREのF(ファ)A(ラ)U(ド)R(レ)E(ミ)の音列をモティーフに作られ、当合奏団のために作曲されたものであります。他の日本曲については、現代のなじみ深い歌曲を取り上げたが今回は割愛しました。大場誉一(1920〜東京)作曲法を菅原明朗、指揮法を尾高尚忠に師事、東京音楽大学講師、全日本リード合奏連盟理事長。今回演奏した「マンドリンオーケストラの為の祝典前奏曲」は、(正式には川口優和氏の音楽生活41年(よいとし)を祝って)と云うもので作曲者は浅草の清元の4代目家元である事から、その作風は従来の日本歌曲とは異なり純日本施法で作られ、打楽器に締太鼓、笏、鐘などが使われている。アテネ、ローマ共に非常な好評を得ました。
第2部は、バッフェルベル、スカルラッチィ、モーッアルトの小品を演奏しましたが今回は割愛し、アテネでのギリシャ歌曲とローマでのカンツォーネを演奏する事としました。ギリシャの曲は現在一番人気のある作曲家の作品であるが、中でも一番人気のあった「くもり空の日曜日」はギリシャの人々にとって忘れる事のできない第二次世界大戦のドイツ軍による大きな被害、続く軍事政権による圧政、外国への亡命、平和を渇望する民衆の想いの曲である為に今も唄い継がれており、歌詞は次の様なものであります。

くもり空の日曜日

くもり空の日曜日 私の心に似て
いつも曇り曇っている ああ神様マリア様

あなたはあの日(あの日曜日)と同じに 私から喜びを取り去った
くもり空の日曜日 日曜日 私の心は血にぬれて

雨が降ろうものなら(涙ぐもうものなら) ひとときだって落ちつかず
私の人生を暗闇につき落とす そして深いため息が出るよ